幸せになるための二つ目の方法は、自分を責めないということです。①でお話した、我慢や無理によって溜め込まれたマイナスの感情は、マイナスの意識となって自分を苦しめます。この意識は言ってみれば自己嫌悪や自己否定そのものなのです。ですからあなたが自分を責めてしまうと、責めた分だけその感情を潜在意識の中に溜め込んで、結果としてそのマイナスの意識そのものを成長させてしまうことになります。自分を駄目な奴だと思うこと、どうしようもない存在と感じる心、こういった否定的な感情はすべてマイナスの意識を巨大化させていくことになってしまいます。
幼少期に親から否定的な言葉を使って叱られたり、怒られたりすることが続くと、まだ物事のいい悪いの判断基準が出来上がってないため、子どもは自分を駄目な子なんだと簡単に思ってしまいます。退行催眠のセッション中によく出てくる場面の一つに次のようなものがあります。親にひどく怒られてる子どもの自分は、実は何が本当に悪いのかは分からないのに、親が怒っているのだから自分は悪いのだろうと思ってしまっているという場面です。場合によっては、親が怒るだけでなく、泣いたり悲しんだりすることもあり、その場合には余計に子どもの自分は自己嫌悪を強くして悔やんだりしてしまいます。これが自分を責めることの始まりなのです。
人が自分を責める場合というのは、大きく二つの場合に分けられると思います。その一つは自分が行った言動に対して後悔したりする場合です。たとえば仕事上でミスをしてしまったとか、うかつな言葉で人を傷つけてしまったなどの場合です。この場合は比較的マイナスの感情は小さく、そして一時的である傾向にあります。そしてうまくすると、自分の言動を反省して改めていくことに繋げられるのです。
一方、もう一つの場合は自分の性格など、自分自身を責めてしまう場合です。前述した幼少期に親に叱られて自分を責めるのもこちらの場合になるのでしょう。この場合には、マイナスの感情は大きく、そして継続的であることから、自分を不幸に陥れる可能性が強くなってしまいます。そして、こういう状態にいる人が自分の言動を責める場合には、そのことに執着してしまい、反省して改める方向へは行かない場合が多くなります。
それでは自分を責めないようにするにはどうしたらいいのでしょうか?いくら自分を責めないようにしようと固く決意しても、そう簡単に今まで何度となく自分を責めてきたものを変えることは難しいですね。場合によってはどうしても自分をひどく否定したくなってしまうこともあります。そんな時には、次のような考え方を採用してみるといいかもしれません。
まず、自分の言動を責めてしまって、なかなかそこから抜け出せない場合ですが、コラムの『すべては自分自身』に記してあることを参考にして、仮に自分の言動で誰かが傷ついたとしても、それはその傷ついた人の心の反応であるとするのです。(勿論実生活で傷つけた相手に謝るなどの行為が不要だと言っているのではありません。)同じ言葉を発しても、全く傷つかない人もいるのです。このことは、自分が癒されていって楽になってくると、よく分かります。過去にとても傷ついた他人の言葉でも、楽になった後は少しも傷つかなくなっていたりするのです。
またミスを犯してしまったような場合でも、人は人、それを人がどう受け取るかはその人の心の反応なんだと思えばいいのです。大抵、自分の言動を責め続ける人は他人からの評価をとても気にしているのです。だから人は人と思えなくなっているのです。
一方自分自身を責めてしまっている場合はどうしたらいいのでしょうか。この場合は考え方やものの見方を変えるだけでは難しいかもしれません。自分を否定してしまう核になる部分を見つける必要があります。一体いつから自分を責めるようになったのかを見つめてみます。例えばオギャーと生まれたばかりの赤ちゃんの自分を責める人はいません。3歳の自分は?6歳の自分は?そうやって自分を責め出した年齢の時の自分を何度も見つめてみると、やはり親との関係の中にその原因を見出すことができるはずです。
親に怒られる、人と比較されたり、褒めてもらえないなど、否定的な言葉を言われる、認めてもらえない、見下される、あるいは親の期待に応えられないなど、自分を責めるようになる要因はいくらでもあります。そのことに気付いたら、その時に自分が味わった辛い感情を見つめて、何度も繰り返し味わってみることです。感情は味わった分だけ解けてなくなっていきます。そして、その時の感情が開放されていくと、それだけ自分を責めなくなっていきます。
自分を責めないようにしようと思って気をつけていると、自分を責めてしまったことに気付いた後、ああまたやってしまったと責めた自分をまた責めてしまうということがよくあります。これでは逆効果ですので、責めてしまった自分はまだそういう状態にあるのだと思って、そんな自分を許してあげればいいのです。
自分を責めるということから開放されていくと、次第に他人を責めることからも開放されていきます。自他ともに責めないでいられることで、心が安定して穏やかになっていきます。
③へ続く